東京、京都、大阪、福岡、沖縄、札幌の民泊に関する条例

東京、京都、大阪、福岡、沖縄、札幌の民泊に関する条例

2018年6月の民泊新法施行に向け、全国各地で民泊に関する条例が制定され始めています。民泊新法では、全国の住宅地で180日を限度として民泊を認めるのに加え、自治体独自の規制導入も認めています。

特に、インバウンド(外国人の旅行者)による民泊が過熱するであろう全国の都市部においてはすでに条例による規制が進んでおり、今まで民泊をしていた方も、これから民泊を始める方も条例をきちんとチェックしておきたいところです。ここでは、全国の主要都市が制定した民泊に関する主な条例について解説します。

全国主要都市の民泊に関する条例

全国の条例をみてみると、平日の民泊禁止、事業開始前に周辺住民へ周知徹底、住居専用地域での民泊禁止及び制限など、それぞれ内容が大きく異なります。

日本経済新聞が2018年2月に行った独自の調査によると、民泊に関する条例を制定した・制定予定である自治体は全国で約4割。1都3県、いわゆる首都圏では、半数以上の自治体で独自の条例を制定、民泊を規制する方向に進んでいます。

このように多くの地区で条例が制定されていく中で、インバウンド流入が多く民泊需要が高い地域では、民泊を利用したい観光客と貸し出したい事業主の両者が条例を理解していないとトラブルに発展することもあるでしょう。主要都市ごとの条例とその内容をみていきましょう。

東京都

全国の中で条例による規制が最も進んでいるのが東京都です。都内の約7割の自治体がすでに条例を制定したか規制検討中であることがわかっています。23区内で民泊を行う物件数が多いのは新宿、渋谷、台東区が上位を占め、観光に利便性のよい地区がインバウンドへ人気が高いことがうかがえます。

そして稼働率や物件数は多くありませんが、23区内の民泊条例で注目したいのは太田区です。大田区、新宿、渋谷、台東区の民泊条例はどのようになっているのでしょうか。

太田区

大田区では、民泊新法施行によって住民の生活環境が悪化しないよう「住宅宿泊事業法施行条例」を制定しています。また、大田区は国家戦略特区にあたることから、特区に認められる旅館業法の特例を活かし、「特区民泊」を行うことができます。

現在、大田区が定める特区民泊として認められている事業者は50を超えています。しかし都内でも規制が厳しくなる中で、特区であるにもかかわらず国の定める民泊新法よりもさらに厳しい規制を敷いたのが太田区です。これは区や住民にとって好ましくない民泊事業者を排除し、トラブルを避けるためであることが考えられます。

宿泊者に対面での説明を義務付ける、消防や救急をいつでも呼べる体制にするなど厳しい条件を付与したり、民泊を行えない地域を指定したりとこれから民泊事業を考えている方にとってはあまり喜ばしくない内容です。

一方で、宿泊日数に関する規制を緩和し、最低宿泊日数を6泊7日から2泊3日に短縮しました。そのほか、注目しておきたい条例の内容は以下の通りです。

特区民泊について
  • 国家戦力特区の特例を活かし、旅館業法に定める許可なしで民泊に取り組める
  • ただし大田区の定める条例の要件を満たす必要がある
  • インバウンド以外の国内観光客も利用可能
条例の主な内容
  • 住居専用地域と工業地域での民泊禁止
  • 周辺住民への民泊事業周知徹底
  • 最低宿泊日数2泊3日

新宿区

23区内でもっとも民泊の多い新宿では、規制条例を「新宿区ルール」と呼び、次のように条例を定めています。新宿区で主に注目しておきたいのが、住居専用地域での民泊が金・土・日に限られていることです。

条例の主な内容
  • 民泊事業開始7日前までに周辺住民への周知徹底を行うこと
  • 対応した苦情の情報は3年間保管すること
  • 住居専用地域は月曜から木曜まで民泊禁止

渋谷区

渋谷区では、住民・事業者・インバウンドそれぞれのコミュニケーションが円滑になるよう条例を定めています。その他トラブル防止のための防犯対策、新宿と同じく事業開始7日前に周辺住民への周知徹底を行うことが条例に盛り込まれています。

条例の主な内容
  • 住居専用地域、文教地区での民泊実施日に制限を設ける
  • 事業者は地域団体の行う行事に積極的に参加すること
  • 事業開始7日前までに周辺住民への周知徹底を行うこと

台東区

台東区では2018年2月より条例が施行されましたが、制限はそれほど厳しくありません。

条例の主な内容
  • 管理者が常駐しない住宅では、月曜正午から土曜正午までの民泊を制限(祝祭日除く)
  • 共同住宅では区の定める標章を掲示する
  • 事業者は周辺住民と周辺学校への周知を徹底する

京都市

通年国内外からの観光客であふれかえる京都では、民泊も含めた宿泊者に対し2018年10月から宿泊税を徴収することを決定しました。規制強化に加え、無許可民泊の営業停止指導も行っています。

京都市の民泊苦情窓口には多くの苦情・相談も寄せられており、インバウンドの多い京都の民泊事情がうかがえます。

京都市は民泊規制強化の1つとして、条例で「駆けつけ要件」を定めているのが特徴です。現在、民泊を営む事業者の中には、民泊として貸し出す住居の遠隔地に居住する人も多いことから、「事実上の民泊事業者排除では?」と不満の声も上がっています。

条例の主な内容

  • 住宅専用地域では町や物件および家主同居物件を除き、冬の60日間のみに営業を限定する
  • 事業者は10分以内に駆け付けられる場所に駐在すること

大阪市

大阪市でも、東京の大田区と同様特区民泊が認められています。大阪市の特区民泊では、民泊の事業を行える地域を旅館やホテルの建設が認められている地域のみとしています。また、特区民泊で認められる住居には一定の要件が定められており、どのような物件でも営業できるというワケではありません。

大阪市は人気の京都と近いことからインバウンドの需要も高く、その分住民と事業者または観光客とのトラブルのリスクも高いことが懸念されています。そのため治安保持に関する決まり事も多く、滞在者が複数いる場合にはパスポート確認などが義務付けられています。

宿泊施設の貸し出しは「できれば対面で」ということですが、必ず対面で受け渡しをしなければいけないということはありません。その他、民泊新法施行に向けて条例が制定・変更された内容は以下の通りです。

条例の主な内容

  • おおむね民泊新法に沿う
  • ただし近隣住民への周知徹底義務を負う
  • 小学校周辺での平日営業禁止

福岡市

福岡市では民泊の規制緩和に前向きです。2016年から取り組んでいた「マンションの空き部屋を民泊施設として認める」条例により、福岡市におけるホテル不足に効果を示しています。

マンションの空き室を民泊とするためには、事業者の登録を行うほか、市が定める一定の要件を満たしている必要があります。不動産業者などが民泊の登録を行い、利用者からは好評を得ており、リピーターも多いようです。

その一方で、無許可営業をしている事業者に対する苦情も増えており、民泊の規制緩和の難しさを物語っています。

条例の主な内容

  • 利用者には直接鍵を受け渡す
  • 管理者は10分以内に駆け付けられる場所に管理事務所を設置
  • 72時間以上記録できるビデオカメラを設置すること

沖縄県

沖縄県では、民泊新法にともなう条例案がまだ可決されていません。2018年3月現在、条例案はでているものの、住民の意見などを反映しこれから条例を可決させます。

条例案には、住宅専用地域及び学校から100m以内の区域では民泊に制限を設けるとあります。そのほか、住民からの意見によってはさらなる制限が設けられるかもしれません。

札幌市

インバウンドに人気の北海道札幌市では、2017年12月に民泊に関する条例を制定しました。道内では民泊の登録数が急増しています。その中で札幌市が占める民泊登録割合は6割を超え、全体の半分以上を占めている状態です。

北海道の主要都市である札幌では、民泊登録急増に伴い宿泊者と近隣住民によるトラブルも増えています。こういった背景から、札幌の条例は民泊新法よりもさらに規制を盛り込んだ内容です。

条例の主な内容

  • 住居専用地域では祝日、土日、12月31日から翌年の1月3日の期間のみ営業を許可
  • 学校から100m以内にある民泊では祝日、土日、学校の授業がない日以外の営業を制限
  • 自宅以外で民泊事業を行うもの、宿泊者が滞在中に事業者が不在となる住宅、居室が5以上の住宅での民泊事業を否認

まとめ

民泊に関する条例は自治体によってさまざまであることがわかりました。多くの主要都市で住居専用地域や学校周辺で民泊の制限をかけているのは、犯罪やトラブルを回避するためであることが考えられます。

民泊新法によって規制が緩和される一方で、自治体は以前よりも強い規制をかける傾向があります。民泊を行う事業者は、事業所のある地域の条例に従い、安全に事業を続けましょう。

これから民泊を始める方は、事業開始前に条例をよく理解し、わからないことがあれば自治体の担当者に尋ねるなど、開業に向け努力しましょう。

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