幹線道路など交通量が多い道路、または人通りの多い道路に面した土地をロードサイドと呼びます。決して住宅向けの土地とは言えませんが、その特徴は商業店舗には良い条件となり、収益性の高いロードサイド店舗経営が期待されています。
ロードサイドに土地を持っている人ならば、店舗事業者から商業施設の出店や開発を持ちかけられたことも少なくないでしょう。
しかし、収益性の高いロードサイド店舗といえども、店舗事業者からの話だけを信じてしまうと失敗することもあるでしょう。自分でしっかりと判断するため、ロードサイド店舗経営の基礎知識が必要になってきます。
そこで今回はロードサイド店舗経営の基礎知識を解説し、そのメリットとデメリットを解説していきます。特に現在ロードサイドの土地活用を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
ロードサイドの土地活用について
ロードサイドの土地活用には様々なものがありますが、まず覚えておいて欲しいのがその事業方式の違いです。その事業方式は大きく分けると下記の2つに分類されます。
- リースバック方式
- 事業用定期借地方式
基本的には商業施設が小規模であればリースバック方式が採用され、大きくなるほど事業用定期借地方式となります。よって、活用する土地の規模によって開設できる商業施設と事業方式が決定されることになります。
それではこれら事業方式について解説していきながら、開設可能な商業店舗にはどのようなものがあるのかを見ていくことにしましょう。
リースバック方式
一昔前までは店舗事業者に土地を貸す場合には、店舗の建築費用は店舗事業者負担というのが一般的でした。しかし、現在ではその建築費用を建築協力金という名目で店舗事業者が地主に無利子で貸し出し、地主自らが建物を建設するケースが多くなってきました。
建物が完成した後は契約で定められた保証金を契約期間中に得ながら、借入金を毎月相殺していく形になります。完成後の物件は店舗事業者が期間を定めて一括借り上げするため、高い収益性が期待でき、初期費用の借入負担を軽減できます。
この事業方式がリースバック方式です。近年はアパートやマンション経営でリースバック方式が多く採用されているので、耳にしたことがあるという人も多いことでしょう。
リースバック方式の特徴は下記のとおりです。
- 契約期間 10年から20年が一般的で、その後は毎年更新
- 建物登記 土地オーナー
- 収入形態 地代ではなく建物の賃料
このリースバック方式は先にも話したように土地オーナーが毎月返済できる額内に納める必要があるため、下記のように比較的小規模から中規模な施設開設に限定されます。
- コンビニ
- ファーストフード店
- カラオケ店舗
- レンタルビデオ店
- 飲食チェーン店
事業用定期借地方式
またリースバック方式に対して事業用定期借地方式は店舗事業者に土地を貸して、店舗事業者が建物を建設します。よって、リースバック方式のように土地オーナーが建物の投資費用を負担することがないため、借金返済という大きなリスクを負うことのない土地活用ができます。
収入は地代のみとなりますが商業性の高いロードサイドであれば、地代は土地評価額の3%から6%と比較的高いため、低リスクで高収益の土地利用が実現できるメリットがあります。
また定期借地権の1つに当たるこの事業用定期借地権の期間設定は10年以上50年未満と定められており、契約の更新や延長ができず、期間満了後は建物を解体して更地にして返還することが義務付けられています。よって、契約満了後の土地転用もスムーズに行えるので、土地オーナーとしても土地を貸しやすいの土地活用と言えるでしょう。
事業用定期借地方式の特徴は下記のとおりです。
- 契約期間 10年以上50年未満で更新や延長はなし
- 建物登記 店舗事業者
- 収入形態 地代
またこの事業用定期借地方式は基本的には土地オーナーが出資できない、下記のような大型店舗が対象となります。
- スーパー
- ドラッグストア
- ホームセンター
- パチンコ店
- 家電量販店
- ホテル
- フィットネスセンター
- ショッピングセンター
- ショッピングセンター
- シネマコンプレックス
利益は地代だけのためリースバック方式よりも収益性が低く見られがちですが、規模が大きい商業施設が建設されるため、広大な土地の地代が得られるので対象となる土地オーナーは長期的に安定した高収益が保証されます。
用途のない広い土地を所有する土地オーナーにとおすすめの土地活用となってくるでしょう。
ロードサイドの土地活用のメリットとデメリット
ロードサイド店舗経営は利益性が高いと言われていますが、店舗事業者からの誘いがあれば確実に高い収益が上げられるというものではありません。
ロードサイドの土地活用にはメリットもあればデメリットもあるため、その双方をよく理解した上で本当に適した土地活用が何なのかを比較検討する必要があります。
それではロードサイド店舗経営のメリットデメリットについて解説していくことにしましょう。
メリット
ロードサイド店舗経営のメリットは下記のとおりです。
- 収益性が高い
- 初期投資が少ない
- 経営に関わる必要がない
- 住宅に向かない土地が活用できる
それではこれら内容について見ていくことにしましょう。
収益性が高い
ロードサイド店舗経営の最も大きなメリットは高い収益性です。もちろん店舗の経営状態にもよりますが、一般的には店舗からの収益が見込めるため、どのちらの事業方式であっても毎月まとまった収入が得られる点は見逃すことができません。
店舗経営は収益性が高いと言われる賃貸経営の1.5倍から2.0倍とも言われていることからも、その収益性の高さがうかがえます。
リースバック方式では小規模のコンビニで年間400万円以上、ホームセンター位のクラスともなれば1,500万円を超える収入が得られます。また事業用定期借地方式ならば店舗規模によっても異なりますが、地代の目安は3,000円/坪と言われているため、ショッピングセンターのような大規模施設ならばその収入は年間1,000万円を下りません。
初期投資が少ない
土地活用としてロードサイド店舗経営が優れているのは初期投資が少なくてすむ点です。収益性の高い土地活用を望むほど初期費用は高額になるのが一般的ですが、ロードサイド店舗経営は下記のように自己資金を用意することなく始められます。
- 事業用定期借地方式 初期費用は必要なし
- リースバック方式 店舗事業者から無金利で建築費用を借入できる
同じリースバック方式でもアパマン経営では金利負担となるため、この点は大きなメリットと言えるでしょう。
経営に関わる必要がない
事業用定期借地方式では土地を貸すだけ、リースバック方式でも店舗事業者の一括借り上げとなるため、ロードサイド店舗経営は土地オーナーが経営にかかわる必要がありません。
もちろんリースバック方式でも店舗管理費が発生することはありませんし、店舗事業者が収益を上げるための店舗管理を怠ることも考えられないため、収益だけが毎月勝手に舞い込む夢のような土地活用とも言えます。
住宅に向かない土地が活用できる
土地活用の中で最も収益性が高いと言われているのがアパマン経営ですが、住宅用地として利用するためには下記のような立地条件が求められます。
- 駅に近い
- 周辺にスーパー、コンビニ、病院、銀行、商業施設がある
- 騒音がなく静かなエリア
しかし、ロードサイド店舗経営ならばこれら条件を満たさない住みたくないと思われる立地条件でも、車や人通りが多い道路に面していれば収益性の高い立地条件となってきます。土地所有者は限定されますが、その人たちにとっては大きなメリットとなってくるでしょう。
デメリット
次は特によく理解してもらいたいデメリットです。メリットよりも重要になってくるのでしっかりと目を通してください。
そのデメリットは下記のとおりです。
- 利用可能な土地が限定される
- 中途解約等のリスクがある
- 土地転用が困難
- 節税効果は一切ない
それではこれら内容について見ていくことにしましょう。
利用可能な土地が限定される
収益性の高いと言われるロードサイド店舗経営ですが、向いている土地となればかなり限定されたものになります。よって、ロードサイドに面している土地だからといって、ロードサイド店舗経営に必ずしも向いているわけではありません。
最低でも下記3点の条件をクリアしていることが求められます。
- 面した道路の交通量が多い、もしくは人通りが多い
- まとまった土地が確保できる(最低でも45坪)
- 店舗開設による商品やサービス提供のニーズがある
店舗経営では商品やサービスの提供が求められる地域であることが前提となってきます。よって、集客が見込めるだけの人通りや交通量がなければ問題外となってしまいます。また、ロードサイド店舗は駐車場や駐輪場が必須となるため、小規模なコンビニクラスでも約45坪の土地が必要となるなど、クリアしなければならない条件は容易ではありません。
その上、都市計画法によりロードサイド店舗が建築できないケースも出てきます。店舗規模が大きくなるほど建築可能エリアが限定されてくるため、他の条件を満たしていても開設できない土地である可能性も出てきます。
中途解約等のリスクがある
リースバック方式で事業に乗り出す場合には注意が必要です。リースバック方式の契約期間は10年から20年が一般的ですが、契約内容によっては期間満了する前に店舗事業者が撤退・解約という手段に出ることも珍しくありません。
また毎月の保証料の値下げが求められるケースもあり、当初考えていた収入が得られず、借入の返済ができなくなるという話もよく耳にします。
商業店舗はアパートやマンションと違って撤退されると次の借り手がなかなか見つからないことも少なくありません。となればその間の収入を得ることもできなくなり、身銭を切って返済を行うことになってしまうので土地オーナーには大きな痛手となってしまいます。
これは当初の契約をしっかりと確認して、解約・撤退時のペナルティ設定を行うことで回避可能です。契約期間中の一括借り上げを条件に契約しても、契約条項には店舗事業者の意向に沿って解約・撤退できる条項が記載されているのが一般的です。
リースバック方式で一番のデメリットはこの契約期間中の条件変更です。契約時にはこの条項がどうなっているのかしっかりと確認するようにしましょう。
土地転用が困難
店舗経営を始めると10年から50年もの長期にわたって土地転用ができなくなります。途中でほかの用途に利用したいと思っても転用することはできません。
ロードサイド店舗経営を始める際には、何十年もの長期にわたって土地転用はできないことを覚悟しておく必要があるでしょう。
節税効果は一切ない
更地に建物を立てれば固定資産税と都市計画税の節税ができますが、これは建物が住宅に限っての話です。建物が商業施設の場合にはこの減税措置を受けることはできません。この点は勘違いしている人も多いので注意が必要です。
ロードサイド店舗経営に最適な幹線道路沿いの土地評価額は高いため、土地活用する際には収益性だけでなく税金面も配慮した事業計画が必要となってきます。特に広い土地を所有している人は注意するようにしましょう。
ロードサイドの土地活用を始める際の流れ
それでは最後にロードサイド店舗経営を始める際の流れを簡単に解説しておきます。店舗事業者から提案してくれば話は簡単ですが、自分が所有している土地がロードサイドの土地活用に適したものかどうかを知っておくことも必要です。
進められるがままに店舗経営を始めるよりも、自分で内容をきちんと把握した上で判断できれば、後で後悔することのない決断を下すことができます。
店舗事業者に店舗経営を提案してもらう前段階の流れは下記のとおりです。
- 店舗建築が可能な場所かを調査する
- 店舗建築として利用可能な延床面積を調査する
- 所有地に適した店舗物件の選定
- 店舗業者に相談して事業提案をしてもらう
それではこれら流れについて、その内容を見ていくことにしましょう。
店舗建築が可能な場所かを調査する
店舗に限らず建物を建築する際にまず確認しなければならないのが都市計画法に抵触していないかという点です。都市計画法はどのエリアにどのような建物が建築できるか、またできないかを定めた法律です。
土地の所有者が勝手に好きな建物を建築していては街の整備は進みません。よってエリアごとに建築可能な建築物種類を制限している用途地域が決められています。確認方法は簡単です。下記のいずれかの方法で確認できるので、まずは所有している土地に店舗物件の建築ができるのかを調査しましょう。
- 役所の都市計画課で直接聞く
- ネット上で公開されている都市計画図で確認する
都市計画図を見て自分で調べるよりも直接聞く方が簡単です。電話での対応も可なので、周遊している土地に店舗建築が可能なのか聞いてみるようにしてください。
店舗建築として利用可能な延床面積を調査する
店舗建築が可能でも、好きな規模で建築できるわけではありません。建築基準法で建築可能な延床面積が決められており、建築基準法に基づく、下記どちらか低い方の容積率を用いて建築可能な延床面積を算出します。
- 指定容積率
- 前面道路の幅員に用途地域別に定められた係数を掛けて算出した容積率
所有地が100坪で容積率が150%だとすれば、延床面積150坪までの建物を建築できるというわけです。
専門性を要するため知識のない人にとって容積率を調べるのは簡単なことではありませんが、建築確認申請を提出する役所の部署で尋ねれば簡単に建築可能容積率を教えてくれますし、大抵の場合は計算して教えてもらえます。
先の建築可能かどうかの確認と合わせて役所で確認するとスムースに事が進むでしょう。
所有地に適した店舗物件の選定
建築可能の是非、建築可能な延床面積まで確認できれば、次はその条件に合う店舗選定に移ります。ロードサイド店舗には下記のように様々なものがあり、建築するために必要な条件が異なります。
コンビニ
- 延床面積:約45坪から
- 建築費:約4,000万円から
- 利回り:10%~25%
ファーストフード店
- 延床面積:約60坪から
- 建築費:約4,500万円から
- 利回り:10%~20%
パチンコ店
- 延床面積:約200坪から
- 建築費:約1億4,000万円から
- 利回り:10%~25%
家電量販店
- 延床面積:約1,000坪から
- 建築費:負担なし(基本的に事業用定期借地方式)
- 地代:3,000円/坪
総合商業施設
- 延床面積:約3,000坪から
- 建築費:負担なし(基本的に事業用定期借地方式)
- 地代:3,000円/坪
上記の条件はあくまでも概算となるため、店舗業者や土地のあるエリアによって建築費や利回り、地代は変わってきますが、まずは建築可能な延床面積からどのような店舗が建築可能化を選別し、建築費負担額や得られる収入から比較してみることをおすすめします。
まずは所有する土地でどのような店舗建築が可能なのかを絞り込んでみましょう。
店舗業者に相談して事業提案をしてもらう
建築可能な店舗の絞込みができれば、直接その店舗事業者に問合わせてみることもできますが、業者選定はその後の対応や契約条件等で重要なポイントとなってきます。特定業者に依頼するよりも複数の業者に依頼して条件を比較検討することをおすすめします。
また建築可能な店舗の絞込みに自信がない場合には、下記の方法で業者を見つけることもできます。
- 不動産業者から紹介してもらう
- 取引銀行から紹介してもらう
- 税理士から紹介してもらう
- 建築会社に問い合わせる
- デベロッパーに問い合わせる
全く面識がないところよりも、付き合いのある所に依頼した方が安心感がありますが、紹介という形を取れば手数料が発生するケースもでてくるので、その点はよく理解しておくようにしましょう。
まとめ
ロードサイドの土地活用はほかのものと比べると、最も高い収益が見込める大きなメリットが存在します。しかし、その反面、土地活用に利用できる土地には制限があるため、ロードサイドの土地ならば必ず店舗経営ができるというわけではありません。
つまり、限定された土地を所有する人だけに許された特別な土地活用ということです。よって、選ばれた人には是非とも検討してもらいたい土地活用と言えるでしょう。
しかし、そんなロードサイド店舗経営も必ずしも成功するわけではありません。まずは今回解説したロードサイド店舗経営の基礎知識、そのメリット・デメリットをよく理解してもらい、所有する土地に最も適した店舗経営はなんなのかを自分で考えて見ることが必要です。
店舗事業者に丸投げするのは簡単です。ですが後で後悔することにならないように建築する店舗の絞込みまでは自分で行い、自分の意見が事業計画に反映された土地活用にすることをおすすめします。