ロンドンオリンピックで宿泊施設不足に大いに貢献したことから日本でも注目されるようになった民泊経営。日本でも民泊仲介サイトの最大手Airbnbが参入したことにより、かなりの勢いで民泊経営の広がってきました。
しかし、日本においてはまだ民泊に対する法整備が整っていないのも確かで、現状では民泊ビジネスは違法性やグレー性がしばしば問われています。
実際に民泊運営を行っているホストが摘発されたニュースを目にすることが多くなってきたので、民泊ビジネスに興味を持っている方の中にも二の足を踏んでいる人が多いのも実情でしょう。
そこで今回は民泊ビジネスを行うに当たって、気になる法律上の問題点はどうなっているのかを解説します。
民泊新法による規制緩和の流れ
冒頭でも言いましたが、日本における民泊ビジネスに対する法整備は現状はまだ整っていないのが実情です。それもあって民泊経営を営むホストが摘発される事態に至っていることも確かでしょう。
旅館業法上の問題
日本において民泊を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が、2018年6月15日に施行されることが決定しました。ですが、2018年1月時点ではこの法律に法的効力は一切ありません。
そこで現状の問題となってくるのが、旅館やホテルなどの宿泊施設を営む際のルールが規定された旅館業法。宿泊により料金を請求するビジネス運営はこの旅館業法に基づき、営業許可を取らなければならない規則となっています。
しかし、現状民泊ビジネスにおいて重要なのは民泊が旅館業に当たるかどうかという問題です。
基本的には下記4つの条件をすべて満たしている場合には旅館業とみなされ営業許可が必要になってきますが、このうちの1つでも当てはまらない場合は旅館業には当たらず、営業許可がなくても違法性を問われず民泊ビジネスを営むことができます。
- 宿泊料を徴収している
- 社会性がある
- 反復継続性がある
- 宿泊者が生活の本拠としていない
しかし現状としては、これら規制をすべてクリアして営業許可なしで民泊ビジネスを始めるのは、決してハードルの低いものではありません。民泊ビジネスを営んでいる人が違法営業に当たるとして、摘発されるケースが後を絶たないことを見れば明白でしょう。
それならば素直に営業許可を取ればいいと思うかもしれませんが、旅館業法上の営業許可書は簡単に取得できるものではありません。細かい規制が多く、ハードルが高いため、そこまでして民泊経営を始めようという人はおらず、民泊ビジネスを営んでいる人の大半が無許可営業となっています。
民泊新法とは
民泊ビジネスの盛り上がりにより、現状の旅館業法では対応しきれないと判断した結果、新たに制定されることになったのが、先にも触れた民泊新法(住宅宿泊事業法)です。
現在はまだ施行されていませんが、施行されればホストは都道府県知事へ届出をするだけで、先の旅館業法上の営業許可がなくても民泊ビジネスを合法的に営むことができます。
この民泊新法のポイントは下記とおりです。
- 民泊はあくまでも住宅として位置づけられる
- 年間営業日数は最大180日まで
- 都道府県知事へ2ヶ月ごとの定期報告義務
- 宿泊者名簿の3年間保管義務
- 家主不在型の場合は民泊運営代行サービスへの委託が必須
それではこれらポイントについて簡単に解説しておきます。
民泊はあくまでも住宅として位置づけられる
民泊に利用する施設はあくまでも住宅です。よって、今までは規制により宿泊施設を作ることができなかった住宅専用地域でも、民泊ビジネスはなんの影響も受けず営業できます。
しかし、これは自治体裁量によって規制変更や規制上乗せができるため、自治体の考え方次第では民泊ビジネスが営めないケースも出てくるでしょう。
年間営業日数は最大180日まで
民泊新法、つまり住宅宿泊事業法に定める住宅宿泊事業とは、年間180日までの営業に限られています。これを越える営業を行いたい場合は旅館業法上の営業許可を取るしか方法はなく、違反するとペナルティが課せられることになります。
都道府県知事へ2ヶ月ごとの定期報告義務
民泊ホストは下記内訳の2ヶ月分を、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の15日までに都道府県知事に報告する義務が課せられています。
- 宿泊日数
- 宿泊者数
- 延べ宿泊者数
- 国政別宿泊者数
これらは民泊制度運営システムを使ってWEB上から報告できる予定となっており、これら情報は観光庁により民泊統計として公開される予定です。
宿泊者名簿の3年間保管義務
民泊ホストは宿泊者名簿を備えて宿泊者の下記情報を記載し、3年間の保管義務と、都道府県知事の要請に応じて提出する義務を課せられています。
- 氏名
- 住所
- 職業
- 宿泊日
- 国籍及びパスポートの旅券番号(日本に住所を持たない外国人の場合)
家主不在型の場合は民泊運営代行サービスへの委託が必須
民泊運営は下記の2つに分類されます。
- 家主居住型 民泊ホストが生活の本拠としている
- 家主不在型 民泊ホストが生活の本拠としていない
家主不在型は投資型とも呼ばれ、民泊ホストが民泊施設を貸し出して利益を上げることを目的としています。このタイプは様々なトラブルが予測されるため、必ず民泊運営代行サービス業者に管理委託することが義務付けられています。
新法に基づく民泊する際の注意点
民泊新法が施行されれば、基本的には都道府県知事への届出を行えば民泊ビジネスを開始することができます。しかし、初めて施行される法律であることからも、施行後には何かしらのトラブルが発生することが予測されます。
そこでトラブルを避けるためにも、注意してもらいたいポイントを解説しておきましょう。
都道府県知事への届出とは?
民泊ビジネスを営む際に必要となる都道府県知事への届出と言われてもどんなものか想像がつく人はいないでしょう。そこで届出の際に慌てないように、その内容を簡単に紹介しておきます。
この届出は所定届出書類に下記の事項等の記載が必要になり、届出用紙はWEBからダウンロードすることができます。
(ダウンロード先:https://airstair.jp/wp-content/uploads/2017/10/住宅宿泊事業届出書_第一号様式.pdf)
- 商号、名称又は氏名及び住所
- 役員氏名(法人の場合)
- 法定代理人の氏名住所(民泊ホストが未成年の場合)
- 住宅所在地
- 営業所または事務所の名称及び住所(事業所解説の場合)
- 管理委託先の商号、名称又は氏名等
- 当該住宅図面
民泊施設が所有マンションの場合
マンションでみんぱくビジネスを始める際、まず確認しなければならないのはマンションの管理規約です。管理規約はマンションに住む人が守らなければならない規則で、専有部分である部屋をどのように使用していいのかが記載されています。
ここで確認して欲しいのが、専有部分の民泊利用が禁止されていないかどうかです。しかし、禁止記載がないとしてもマンションの管理規約のベースとなる標準管理規約には、専有部分を住宅以外の使用用途としては認めていない旨があるため、民泊可否の判断基準があやふやな点があります。
これが原因でトラブルとなる可能性も考えられるので管理規約を確認した上で、マンション側に確認を取ることを忘れないようにしましょう。
民泊施設が賃貸物件の場合
賃貸物件での民泊ビジネスは基本的には不可能です。使用規約については貸借人と物件オーナーとの契約内容によって決まりますが、この契約書には無断転貸禁止という記載が必ず織り込まれています。
しかも、この記載がなくても無断転貸は民法で禁止されているので、法律上でも民泊ビジネスを営むことはできません。契約内容に「転貸OK」という記載でもない限り、転貸物件での民泊ビジネスはできないと覚えておきましょう。
消防設備基準の規制はどうか?
民泊ビジネスを始める際には宿泊者の安全性が求められるので、一般宿泊施設と同様の消防設備基準が求められますが、消防法においても規制対象となることもあります。
民泊に使用する施設条件が下記の場合には、一般宿泊施設と同様に消防法の規制対象となります。
- 民泊使用部分が建物全体の半分以上
- 民泊使用部分が50㎡以上
この条件にあてはまる場合には、消防法で決められた下記設備の設置が必要となります。
- 消化器
- 誘導灯
- 火災報知機
後から指導対象とならないよう、事前確認をしっかりと行いましょう。
まとめ
2018年6月に施行される民泊新法により、さらに民泊ビジネスはヒートアップすることが予測されますが、民泊ビジネスを始めるのは届出を出せばOKという簡単なものではありません。
民泊新法以外の各種法律や規約も大きくかかわってきますし、万全を期したつもりでも様々なトラブルが発生することも予測されます。
まずはホスト自身が今回解説した民泊新法の特徴をよく理解し、その上でトラブルのない事業開始となるよう、運営代行会社等の専門家と綿密な計画を練るようにして下さいね。