今では多くの住宅の屋根に設置されている太陽光発電。一昔前までは購入価格が高額だったこともあり普及率は決して高くありませんでしたが、今では政府の補助金による後押しもあり、太陽光発電システムを設置している光景は珍しいものではなくなりました。
そして今、この太陽光発電は継続する人口減少により価格が下落する一方の土地活用にとって、有効活用の手段として注目されるようになっています。
太陽光発電はアパートやマンションなどの不動産投資のように投資費用が多額でない上、周辺に建物がないほど好条件となります。活用方法がなく眠っている田舎の土地ほど有益なビジネスを生み出す可能性が高いので、都市部へのアクセス状況に影響されず収益を上げることもできます。
しかし、この注目の太陽光発電による土地活用もメリット・デメリットがあり、それをちゃんと理解しておかないと、儲かるどころか負債だけ残ってしまうということにもなりかねません。
そこで今回は、太陽光発電の土地活用のメリットとデメリットを見ていきながら、「本当に儲かるビジネスなのか」について解説していきます。
太陽光発電のメリットとデメリット
太陽光発電が土地活用ビジネスに有効な手段なのかどうか判断するためにも、基本的な判断材料となるメリットとデメリットを見ていくことにしましょう。
太陽光発電のメリット
太陽光発電のメリットは下記のとおりです。
- 調達コストがかからない
- 収益に地価が影響しない
- メンテナンス労力が少ない
- 安定した利益収入が保証されている
- 補助金制度により投資補填ができる
それではこれらメリットについて解説していきましょう。
調達コストがかからない
主要な土地活用ビジネスのほとんどが集客を必要としています。集客することによって収益が上がるシステムなので、集客するために様々なコストがかかってきます。つまり、ビジネスを継続していく上で延々と調達コストがかかります。
しかし太陽光発電ビジネスは、販売する電力は太陽光ですから、調達コストは一切かからず収益のもととなる電力を無償で生み出せます。
この点はほかの土地活用ビジネスには見られない、太陽光発電ビジネスの最も大きなメリットと言えます。
収益に地価が影響しない
土地活用ビジネスで欠かせない集客は、土地の地価が大きく影響します。一般的に、地価は都市部へのアクセスがいいほど高くなります。利便性が高い立地条件であることが集客数を増やす第一条件となるため、土地活用ビジネスを成功させるにはどうしても地価の高さが影響することになります。
しかし。太陽光発電ビジネスはこの概念を全く必要としません。逆に周りに建物がない地価の安い、田舎の方が最適なビジネス環境となるケースが多くなっているのも事実です。
これは土地を持っていても、その活用方法がないという人にはまさに見逃すことのできないメリットとなってくるでしょう。
メンテナンス労力が少ない
マンションやアパートなどの不動産投資の場合、経年劣化による補修やリフォーム費用が掛かってきますし、常に入居者が絶えないように魅力的な物件であることを維持しなければならないため、メンテナンス費用はどうしても高額なものとなってしまいます。
しかし太陽光発電システムは、メンテナンスフリーと言われるほどメンテナンス費用がかからず、自然災害の被害にでも遭わなければ10年、20年と多少の修理は発生しますが、メンテナンスフリーで利用できます。
メンテナンス費用が高額でない点は、利益率が高くなることを意味しています。となれば太陽光発電は高収益ビジネスとなる可能性が高いといえるでしょう。
安定した利益収入が保証されている
ビジネスにおいて販売力は欠かせないものとなってきますが、太陽光発電による売電は、電力会社に一定価格で買い取ってもらえるよう国の制度で決められています。
つまり、販売力の強弱によって収益が左右されることがないので、初心者でも安心してビジネスを始められ、安定した収益が保証されてるということです。このような好条件は、土地活用ビジネスだけでなく一般ビジネスにおいても見ることはできません。
補助金制度により投資補填ができる
太陽光発電の設置は、補助金制度による費用補填が望めます。以前設けられていた国の補助金制度は、太陽光発電システムが安価になったことや、普及率が拡大したこともあり、現在のところ打ち切られていますが、各地方自治体による補助金制度はまだまだ継続されています。
東京都の補助金制度は下記の内容となっています。
- 受けられる補助金 補助対象経費の2分の1以内
- 実施期間 平成26年4月1日~平成36年3月31日
補助金制度の内容は各地方自治体によって違ってくるので、まずはお住まいの地域の自治体に問い合わせて、補助金制度の内容を確認するようにしましょう。
太陽光発電のデメリットとリスク
メリットが多い太陽光発電ですが、ビジネスとして完投するならば下記デメリットにも注意が必要です。
- 売電価格が下がってきている
- 太陽光発電に適した土地でなければならない
これらデメリットはビジネス継続をしていく上で、リスクとなる驚異も秘めているので特によく理解しておく必要があります。
売電価格が下がってきている
下記は太陽光発電ビジネスが対象となる、産業用太陽光発電の売電価格の推移です。
- 2012年 40円/kwh
- 2013年 36円/kwh
- 2014年 32円/kwh
- 2015年 29円/kwh(1月1日~6月30日)、27円/kwh(7月1日~12月31日)
- 2016年 24円/kwh
- 2017年 21円/kwh
買取価格は、国の固定価格買取制度に基づき、毎年調達価格等算定委員会によって決定されるのですが、買取価格は毎年減額していくことが制度内で決定されています。産業用太陽光発電の売電価格は20年間適用されますが、ビジネスを開始するのが遅れるほど利益率が低くなることは確かです。
この点はこれから始めようという人にとって、気になってくるところでしょう。
しかも、20年経過後は更に売電価格は減額されることになるので、太陽光発電ビジネスは20年が1つの区切りとなり、その時点でどれだけの収益が得られているのかが重要なポイントだと言えます。
太陽光発電に適した土地でなければならない
太陽光発電で十分な発電をするためには、立地条件が大きく影響してきます。必要面積は実施規模によって変わってきますが、下記の点は使用する土地に欠かせない条件となってきます。
- 周囲に遮蔽物がない(最低20年間維持できるのがベスト)
- パネルを南向きに設置できる
- 日射量が多い
- 日照時間が長い
しかし、これら条件をすべてクリアできていたとしても、年月の流れとともに環境が大きく変わることも考えられます。つまり、最初は好条件でビジネススタートしたとしても、その環境を維持できるかどうかは何の保証もないのです。
周りに何もなかった田舎町が突然、賑わうことはないでしょうが、近隣の発展性や自然環境の変化などによって、当初の収益が見込めなくなる可能性も否めません。極論ではありますが、太陽光発電ビジネスにはそういった側面があることを覚えておきましょう。
太陽光発電にかかる投資費用
それではみなさんが一番気になる太陽光発電の設備投資費用について解説します。
初期費用の目安
太陽光発電システムは、一昔前と比べれば驚くほど安価なものとなりましたが、それでも決して簡単に用意できる費用とは言えません。経済産業省が公開している資料では下記のとおりとなっており、実勢価格から見れば1kwあたり30万円くらいがひとつの目安となってきます。
- 10kw未満 38.5万円/kw
- 10kw以上~50kw未満 36.9万円/kw
実施規模がどれくらいのものかによって、太陽光発電システムの設備投資費用は大きく変わってきます。
しかも、ここに土地や近隣の環境によっては下記費用も発生してくるので、立地条件や利用業者によっても初期費用の総額は変わります。
- 土地造成 利用する土地が農地の場合、地盤改良が必要となる
- 電柱設置 電柱が近くない場合、自己負担で電柱を設置しなければならない
税金などの必要経費
太陽光発電システムの設置にかかる費用は、先に話した初期費用の中に含まれていますが、FIT法の改正に伴い看板設置とフェンス設置が必須要件となったため、下記工事費用が発生します。
- フェンス代金
- フェンス工事費用
- 看板代金
- 看板設置費用
また強制ではありませんが発電監視と障害対応のために、遠隔監視システムの設置を自ら行うことが求められているので、下記費用も必要となってくるでしょう。
- 監視システム費用
- 監視システム工事費用
- 監視システム通信費用
また、利用する土地を購入する場合には土地名義変更手続き費用、そして災害時等の保証のための保険代金も必要となってきます。
そして忘れてはならないのが税金です。太陽光発電による売電をビジネスとする場合には、太陽光発電システムが事業資産と見なされるため、固定資産税がかかることになります。よって土地も所有している場合には、2つの固定資産税支払いが発生するわけです。
この太陽光発電システムにかかる固定資産税は償却資産税と呼ばれ、17年間の課税期間が設けられています。当初3年間は3分の2の課税額となりますが、4年目からは納税額が上がるので、資金計画を練る際には注意が必要です。
利回りの目安
太陽光発電は10年で元が取れると言われています。売電価格が下がっている現在でも、太陽光発電システムの購入費用が下落しているため、この考えは未だに変わりません。
よって、太陽光発電ビジネスの利回りは10%が1つの目安となります。年間10%の利益が出て10年間で100%、そして設備投資費用が完済できるというわけです。
太陽光発電ビジネスの事業計画を練る際には、この利回りは欠かせません。10%を基本に考えることで候補地が太陽光発電ビジネスにあっているのか予測が立てやすくなってきます。太陽光発電ビジネスで高い利回りを期待するなら下記の条件は外せません。
- 日照時間が長い
- 温暖な気候である
- 土地の価格が安い
10%を超える高い利回りが期待できる候補地を探すようにして下さい。
太陽光発電を始める際の流れ
それでは最後に、太陽光発電ビジネスを検討している人のためにも、太陽光発電を始める際の流れを簡単に解説しておきます。今回は事前準備から運転開始まで、5段階に分けてその内容を解説します。
1. 事前準備
太陽光発電システムを導入する際、専門業者に依頼することになりますが、この段階ではまだ業者選定まで行く必要はありません。いわば業者との商談を有利に進めるためにも、情報収集によって基本的な知識を得る段階だと考えておきましょう。
まずは各メーカーの太陽光発電システムの比較です。比較ポイントを下記の3つに絞って、比較するのがポイントです。
- 価格
- 性能
- 保証
そして重要なのが資金計画。受けられる地方自治体の補助金制度もちゃんと調べて、いくらくらいの費用が必要なのか、その費用を同工面するのかなど、具体的な段階まで進めておくのがベストです。
2. 業者への見積依頼
あまりに多くの業者から見積もりを取るのは大変ですが、できるだけ複数者からの見積もりを取るようにしましょう。その際には発電量を含めた調査と工事見積もりを忘れないように依頼しましょう。
そしてしっかりと比較検討した上で、業者を絞込み契約へと進みます。
3. システムの設置
契約が決まると次はシステムの設置です。この工事は大きく分けると下記3つの工程となります。
- 太陽電池の設置
- 周辺設備の設置
- 電気配線
4. 電力会社との系統連系
システムの設置工事が完了すれば、電力会社との電力売買に必要な「電力需給契約」を結びます。この申請は業者が全て代行してくれるので面倒はありません。
この系統連系工事も1時間ほどで完了するので、システムが系統接続できれば運転開始となります。しかし、先に話した固定価格買取制度で安定した売電を行うには、その申請手続きを行わなければなりません。
5. 事業計画認定の手続き
固定価格買取制度を利用するのに必要なのが事業計画認定取得です。これは一般的に、電力会社との系統連系が終了後に経済産業省へ申請することになり、必要書類は電子申請システムを利用して提出します。
申請方法は難しいものではありませんが、提出書類も多いのでシステム購入先の業者に相談するか、専門の代行業者に依頼することをおすすめします。申請後の審査を通れば無事に認定取得となり、太陽光発電ビジネスの開始となります。
まとめ
太陽光発電の売電価格は毎年減額されてはいますが、設備機器の低価格化により、その利回りは未だ10%前後です。マンションやアパートの不動産投資による利回りが6~7%であることを考えれば、収益性の高い土地活用ビジネスと言えます。
しかし、その反面デメリットがあることも確かです。そして、そのデメリットにはビジネスを不成功に終わらせるリスクが含まれていることを忘れてはなりません。この点をよく理解した上で、収益性の高いビジネスとなるよう事業計画を立てるようにしましょう。