近年、新たな土地活用として一部の投資家から注目されているのが老人介護施設です。今後も高齢者人口の増加が深刻化する日本においては、さらに多くの介護需要が見込めるため、高い収益性が期待できます。
しかし一口に老人介護施設と言ってもその種類には様々なものがあり、国からの規制や補助金の有無が違ってくるため、どのタイプの老人介護施設を事業として選ぶのかによって、その収益性も大きく変わってしまいます。
そこで今回はこれら各老人介護施設の種類と特徴について詳しく解説していきます。
老人介護施設の種類と特徴
それではまず様々なタイプに分けられる老人介護施設ですが、大きく分けると下記の2つに分類されます。
- 民間施設
- 公的施設
公的施設はその名の通り下記のような公的機関でないと建築できない老人介護施設で、民間施設は民間業者が自由に建築できる老人介護施設を指します。
- 地方公共団体
- 社会福祉法人
- 医療法人
よって、基本的に土地活用として老人介護施設の事業を始めようという人は、民間施設に分類される老人介護施設から選択することになりますので、民間施設の種類や特徴について解説していきます。
介護付有料老人ホーム
入居条件は原則65歳以上で共同生活が送れる人となっており、常駐している介護スタッフにより、下記のような介護サービス全般が受けられる有料老人ホームです。
- 食事の提供
- 入浴の補助
- 排泄の補助
また老人介護施設では入居の認められない下記のような医療ケアが必要な人の入所を認めるところも多く、24時間看護師常駐対応など医療ケアが充実しているのも一つの特徴です。
- 結核
- MRSA
- その他の感染症
- 胃ろう
- ストマ
- 気管切開
また共同生活という観点から多くのサークル活動や入居書合同で執り行うレクリエーションなどの各種イベントが多く開催され、共用スペースや娯楽室などの施設も完備されており、入居後に寂しさや孤独感を感じないための配慮に長けているのも特徴の一つとなってきます。
原則、終身利用が可能ですが数千万円という高額な入居一時金が必要となり、毎月10万円か
ら30万円という月額利用料が求められるところも多く、予算に合った施設探しが重要になってきますが、これは介護付有料老人ホームに認定されるために多くの設備投資が必要になってくることが原因と考えられます。
介護付有料老人ホームは老人福祉法の定める下記基準を満たし、都道府県から特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームのみです。
- 介護、看護職員
- 機能訓練指導員
- 常勤管理者などの人員基準
- バリアフリー設備
- 職員の勤務体制
- 重要事項説明書の事前説明とその同意
多くの点で高い運営基準が求められることからも、入居費が高額となるのも頷けますね。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは下記のような高齢者を受け入れている老人介護施設で、生活援助や緊急対応、レクリエーションを受けることができます。
- 要介護者
- 自立状態の高齢者(要介護者以外)
- 要支援状態の高齢者
介護者や看護婦などの常駐はなく、それらサービスが必要になる場合には外部サービスを利用した対応となるため、それらサービスが過度に必要な場合には退所を求められるケースも出てきます。
しかし介護と医療サービスの対応は各施設によって違ってくるので、どの程度の状態まで受入可能かは事前に確認しておく必要があるでしょう。
レクリエーション等の有意義に日常生活を送るための施設は幹部位されていますが、介護や医療対応は介護付有料老人ホームのように充実していないため、重度の介護状態では入所することは難しいのが実情です。
その反面入諸費用は介護付有料老人ホームと遜色がなく、高額な費用が必要となります。
ですが各施設によってホームの設備に大きな隔たりが有り、入諸費用はどの程度の設備や施設を求めるのかによって大きく違ってくるでしょう。
健康型有料老人ホーム
この老人ホームは基本的に下記のような家事手伝いなどのサポートを受けながら、シニア生活を楽しむための施設となります。
- 炊事
- 洗濯
- 掃除
よって入居者は介護認定なしの自立高齢者、もしくは要支援状態の高齢者となります。
日常生活を楽しむために下記のような娯楽設備は充実していますが、介護や医療のサポートは外部サービスに頼ることになります。
- 図書館
- スポーツジム
- シアタールーム
- 碁会所
よって、日常的な家事支援だけでは生活していけない重度の要介護者は基本的に入居することはできません。
入諸費用も初期費用が数億円、毎月の月額料金が10万円から40万円と高額となるため、高所得者が生活支援を受けながら老後を楽しく生活できる場を提供しているだけの施設とも言えるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅
国からの補助金が出るなど国が推進して普及を目指す、高齢者向けバリアフリー対応の賃貸住宅で、下記のような高齢者を受け入れています
- 60歳以上の高齢者
- 介護認定なしの自立高齢者
- 経度の要介護認定を受けた高齢者
高齢者の居住安定を目的に運営しているため、通常の賃貸住宅のように高齢を理由に入居を断られることもありませんし、契約の更新もありません。
個室の賃貸借契約となるため常に介護者が各部屋に常駐するわけではないため、ここまで紹介した施設のようなサービスを受けることはできません。
日中に医療や介護の有資格者が建物に常駐して、安否確認と生活相談サービスが受けられる程度です。
基本的な仕様は高齢者が安心して入居できる賃貸借物件といったところでしょう。
しかし、施設として運営するためには下記のような決められた規定をクリアすることが求められ、建設時に都道府県への申請登録が必要になります。
- 個室は25㎡以上
- 廊下幅78cm
近年はこの施設の普及に伴い、受けられるサービス内容にも変化が出ており、介護付有料老人ホームと変わらないサービスが受けられるところも出ています。
こういったサービス内容の拡充にともない。今後もサービス付き高齢者向け住宅の普及はさらに拡大していくことが予測されます。
通所介護(デイサービス)
一般的にはデイサービスという呼び名で通っており、日帰りで施設に通って、下記のようなサービスが受けられる施設です。
- 食事
- 入浴
- レクリエーション
- 日常生活上の介護
- 機能訓練
施設において多くの高齢者と交流することで引きこもりや孤立を防ぎ、施設に行っている時間の家族負担を軽減することができます。
利用対象者は要介護認定1から5の高齢者で、費用も1日あたり約1,700円と低額なのも利用者にとっては大きなメリットとなってくるでしょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所生活介護はショートステイとも呼ばれ、その名のとおり短期的に施設に入所して介護サービスを受けながら生活を送ることができる施設です。
入所日数は最大で30日、受けられるサービスは各施設によって違ってきますが、基本的には下記のような日常生活支援が中心となり、医療的介護が必要になる場合には医師や看護師が配置された短期入所療養介護(医療型ショートステイ)と呼ばれる施設へ入所することになります。
介護者が短期間どうしても家を開けなければならない等の理由で、被介護者の面倒が見られない場合に活用できるサービスで、1日千円に満たない料金で利用することができます。
一時的に介護から離れて自分の時間を持ちたいといった理由で利用する人も多いため、入居希望者が多く、申し込んでもすぐに入居できないのが問題となっています。
小規模多機能型居宅介護
通いを中心として下記のようなサービスが受けられる施設で、訪問や宿泊を組み合わせた利用ができるのが大きな特徴です。
- 食事提供
- 入浴の補助
- 排泄の補助
- 洗濯
- 掃除
- 生活等の相談
- 健康管理
- 機能訓練
対象者は要介護1以上の高齢者で、利用料金は1花月単位で要介護度によって1万円から3万円の範囲で設定されます。
デイサービスと似たサービス内容となっていますが、通いだけでなく訪問や宿泊のサービスが受けられる点で利用できる層が幅広くなっています。
認知症対応型生活介護(グループホーム)
認知症対応型生活介護はグループホームとも呼ばれ、認知症の利用者に限定したケア提供を受けることができ、自宅で自立した生活が送れるための生活機能維持能力の向上を目指します。
入所して生活することで下記のサービスが受けられ、一般的には5人から9人ほどの利用者が介護スタッフとともに共同生活を営みます。
- 食事
- 入浴
- 機能訓練
利用できるのは要支援認定2以上と要介護認定1以上の人で、認定度で利用料金は若干違ってきますが、1日900円未満(日常生活費は別途請求)で利用することができます。
まとめ
一口に老人介護施設といっても今回紹介したように実に多くの種類の施設が存在します。一般に人が土地活用として運営できるのは民間施設に限定されることになりますが、それでも実に多くの施設が存在し、提供するサービス内容も違ってきます。
中には運営するために多くの条件をクリアしなければならない介護付有料老人ホームのような施設もあるので、事業資金として捻出できる金額によって運営施設を検討することになるでしょう。