余っている土地は貸すのと売るのではどちらがお得なのか?

余っている土地があるけれどうまく活用できていない。何かうまい活用方法はないものだとうかと思い悩んでいる人は多いことでしょう。

何もせずに眠ったままにしている遊休地は維持管理費がかさむだけで何の利も生まない負の財産となってしまうので、なんとかうまく活用したいと考えているはずです。

そこで今回は遊休地のデメリットをよく理解してもらい、貸した方がいいのか、売却してしまった方がいいのか、その活用法について詳しく解説していきます。

そのまま放置する危険性

余った土地をそのままにして放っているという人は少なくありません。核家族化が進む近年は親族から相続しても使い道がなく、しかもその土地が遠隔地にあることも多いため、今後もその数が増えていくことが推測されます。

しかし、土地は活用してこそ価値が生まれます。使い道がなく放っておけばマイナス資産となるだけで、所有者は下記のように多くのデメリットやリスクを背負うだけです。

  • 固定資産税がかかる
  • 土地の境界が曖昧になる
  • 周辺地域に与える悪影響
  • 知らない間に他人のものになっている可能性も

それでは上記内容について解説していきましょう。

固定資産税がかかる

土地や不動産を所有する人には、毎年固定資産税の納税義務が発生します。しかも土地にかかる固定資産税は土地が建物の敷地となっている場合と、そうでない更地の場合では支払う税額にも大きな違いが出てきます。

基本的に固定資産税は対象資産の課税標準価格に標準税率の1.4%をかけたものになるため、課税標準価格が1,000万円の土地の場合、その1.4%に当たる14万円の固定資産税が毎年発生します。

しかし、その対象となる土地に建物が建っていれば固定資産税の特例として、下記のような減額措置が受けられます。

  • 住宅一戸の敷地200㎡までの固定資産税を6分の1に減額
  • 住宅一戸の敷地で200㎡を超え床面積の10倍までの固定資産税を3分の1に減額

先ほどの土地が1番目の条件に当たればその固定資産税は23,333円となり、支払う固定資産税には大きな差が出てきます。

都市計画税も同様に下記の減税措置がとられることからも、更地のままで活用せずに放っておくことのリスクがいかに高いかは明白です。

  • 住宅一戸の敷地200㎡までの都市計画税を3分の1に減額
  • 住宅一戸の敷地で200㎡を超え床面積の10倍までの都市計画税を3分の2に減額

減税措置を受けるためだけに活用目的なく建物を建設するのは馬鹿な行為ですが、土地を所有し続けるのであれば何らかの土地活用を検討する必要があることは理解してもらえるでしょう。

土地の境界が曖昧になる

土地の大きさと境界が記載されているのが地積測量図ですが、ご近所トラブルの原因となりやすいのが隣地との境界線です。これは境界を示す境界標を見れば明らかなのですが、その境界標がなくなっていたり、勝手に塀を境界だと思い込んでいることも少なくありません。

そうなると自分の土地だと思っていたところが相手のものであったり、またその逆のケースも出てくるため、境界が曖昧なことからトラブルに発展することも多々見られます。

これは実際に住んでいても起こりやすいので、住んでおらず所有しているだけという場合には余計に起こりうる問題と言えるでしょう。既に自分の土地に隣家の建物が建てられており、固定資産税だけ負担させられていたという話も珍しくありません。

勝手に自分の土地を利用された上、その固定資産税まで負担させられているではたまったものではありませんよね。

これら問題はすべて境界が曖昧になっていることが原因です。そうならないためにも境界がはっきりとしていない土地を得た場合には、土地家屋調査士に正しい境界線を確定しもらい、隣家が不当に自分の土地を利用している場合には下記のような対応を取るようにしましょう。

  • 不当に建てられた建物を撤去してもらう
  • 建物が建てられた土地を購入してもらう

周辺地域に与える悪影響

土地のみを所有して活用していないとその管理が十分でないことが原因で、雑草だらけの荒れ果てた状態となってしまうことも珍しくありません。恐らく皆さんもそういった空き地を見かけたことがあるのではないでしょうか。

管理されていないこういった土地は雑草が生い茂るだけでなく、害虫の発生源となったり、不法投棄によるゴミ溜めとなり、美観性と清潔感の感じられない状態へと変貌していきます。

またこういった土地に対しては犯罪発生への不安感を抱いている人が多いことが国や地方自治体のアンケートでも明らかとなっており、実際にこういった土地では放火による火事の発生数が増加しているという報告も上がっています。

そういった土地がある周囲の環境は悪く感じられるので、入居者が減ってさらに空き地や空き家が増加する可能性も予測できます。そうなればその時点で自治体をも巻き込んだ大きな問題に発展することも考えられます。

となれば土地を管理するための業者委託が必要になってくるでしょうし、それにかかる費用負担が発生します。固定資産税だけでなく、こういった費用負担が発生することを考えれば、遊休地にしたまま所有し続けることがいかに馬鹿げたことか理解してもらえるでしょう。

知らない間に他人のものになっている可能性も

実は相続したままで長期間放置している土地の場合、知らない間に他人の所有物となってしまっている可能性があります。自分の所有物が知らない間に他人の物になってしまうなんて信じられない話ですが、民法第162条の「所有権の取得時効」では下記のような条文が記されています。

  • 揉め事なく他人の土地を継続して20年間占有できた場合、その所有権を取得できる
  • 他人の土地だと知らずに10年間占有していた場合、その所有権を取得できる

なんだか嘘のような話ですが、この民法第162条によって自分の土地が知らない間に他人のものになっている可能性も出てきます。特に土地が遠隔地にある場合、長期間放ったらかしで確認していないというケースも出てきますし、相続時に土地の存在自体を知らなかったということも有り得ます。

土地活用で貸すケース

活用のあてがない遊休地のまま土地を所有することがいかに負担となるかを理解してもらったところで、次はその土地の活用方法について解説します。土地活で最も多く取られているのが賃貸です。

後ほど解説する売却という方法もありますが、賃貸料が生まれるのであれば所有し続けて利益を得た方が断然メリットが高いと言えるでしょう。しかし、この賃貸もメリットばかりではなくデメリットも発生するので、賃貸する際にはその両方を理解しておく必要があります。

それではそのメリット、デメリットについて詳しく見ていくことにしましょう。

メリット

それではまずは一番期待のかかるメリットから見ていきましょう。土地賃貸のメリットは下記のようなものが挙げられます。

  • 長期間の賃貸料が保証される
  • 借入の必要がない
  • 税金を減額できる

それではこれらの内容を解説していきましょう。

長期間の賃貸料が保証される

先にも触れましたが土地を所有すると毎年、固定資産税の支払い義務が発生します。活用しない土地だと延々とこの税金を支払い続けるだけですが、土地を貸せばその賃貸料が得られるため、収支をマイナスからプラスに反転することができます。

また土地を貸す場合には借地権の取り決めが借地借家法で定められており、借地権の更新のある普通借地権と更新のない定期借地権の2つに分類されます。ここで注目してもらいたいのが各借地権の存続期間です。

普通借地権
  • 契約時に期間を設定する場合は30年以上
  • 契約時に期間を設定しない場合は30年
定期借地権
  • 契約時に期間を設定する場合は20年以上、以降更新は10年毎
  • 契約時に期間を設定しない場合は初回更新が20年、以降更新は10年毎

つまり最低でも20年間の賃貸料を得ることができるわけです。またその賃貸料については価格設定方法がいくつかあり難しい面もありますが、下記のようにいずれも支払う固定資産税を上回ることからも、借り手さえいれば確実に収益を生み出せるのは大きなメリットです。

  • 公租公課の一定率による算出 固定資産税評価額の5%から8%
  • 積算法による算出 更地価格×期待利回り+固定資産税+都市計画税

借入の必要がない

不動産投資は成功すれば得られる収入が大きいため、単に土地を貸すよりも収益性の高い土地活用となります。近年は超低金利時代に突入したことから、アパートやマンションなどの不動産投資が人気なのもこの収益を狙ってのことでしょう。

しかし、不動産投資には何千万円もの多額な初期投資費用が必要となるため、いざ始めるとなれば銀行からの高額借入が必須となってきます。その点で言えば土地を貸すだけなら土地活用を始めるにしてもそんな大きな負債を抱える必要はありません。

大きな負担を抱えたくないという人にとって、利用しやすいという大きなメリットを生み出す土地活用と言えるでしょう。

税金を減額できる

土地を賃貸する際に期待できるのが建物の建設です。先に解説したように更地と建物がある土地では支払う固定資産税と土地計画税に大きな差があるので、土地の賃貸で建物が建てられれば大幅な納税額の軽減が期待できます。

また税金面でのメリットはこれだけではありません。仮に相続する土地が貸付事業に用いられていた場合、相続税で最大200㎡で50%の減税措置が受けられます。これは相続前に土地が賃貸されている必要がありますが、相続予定の遊休地がある場合、先を見越して土地活用を始めておくのもおすすめの方法と言えるでしょう。

デメリット

メリットについて理解してもらったところで、次は耳の痛いデメリットについて見ていきます。土地の賃貸で予測されるデメリットは下記のとおりです。

  • 土地転用が難しくなる
  • 需要がないことも
  • 近隣住民とのトラブル

それではこれらの内容を解説していきましょう。

土地転用が難しくなる

先にも話しましたが土地を賃貸する場合には借地権の設定が必要となります。最低でも20年間の設定となるので、長期間安定した賃貸収入を得られるというメリットが生まれますが、これは逆に言えば地主にとってはデメリットとなるケースも出てきます。

最低で20年間、契約によってはさらに長い30年、50年といった設定も可能なため、長期間に渡って土地転用が全くできなくなってしまいます。借地権の存続期間中に立ち退きを依頼しても正当な事由がなければ拒否されますし、正当な事由が認められても高額な立ち退き料の支払いが発生します。土地の賃貸は土地転用が難しいことをよく覚えておきましょう。

需要がないことも

土地の借り手がいるということは、その借り手が何らかの土地活用を狙ってのことです。土地活用にはさまざまな方法がありますが、土地を借りてまで始めようという際には、下記のような収益性の高いものが大半を占めます。

  • アパートやマンションの不動産投資
  • 駐車場経営
  • コンビニ等の商業店舗経営

よって、立地条件によっては収益性が見込めないことから、借り手が見つからないというケースも予測されます。自分の所有する土地がどんな立地条件なのか、どういった用途に適しているのかなど、素音特性をよく見極めた上での土地活用選びが必要になってくるでしょう。

近隣住民とのトラブル

土地の賃貸で想定しておかなければならないのが近隣住民とのトラブルです。借り手が近隣に迷惑をかけ行為を行った場合には、地主に直接クレームが入ることも出てきます。

また、当初は駐車場利用で土地を貸したのにもかかわらず、収益が出なかったことでいつの間にやら集積場の変わっていた。住宅街だったことから周囲から多大なクレームが上がるようになった。所有している土地が遠隔地にある場合、管理ができないためこういったケースも予測できます。

このような近隣住民とのトラブルを回避するためには、土地管理をしてもらえる不動産業者との契約も必要となってきます。となればその費用負担も考慮した賃貸料設定が必要位になってくるでしょう。

土地を売却するケース

借り手がいるならば土地を所有し続けたままでその賃料を得るというのもおすすめの土地活用ですが、売却によって土地を一気に現金化するのもひとつの手でしょう。土地を貸すとなれば借り手がいなければ成立しませんし、税金や管理費も発生するので、煩わしい思いをしたくないという人にはメリットの高い手段だと言えます。

しかし、土地を貸すのと同じように売却にもメリット、デメリットが存在します。売却という手段を選ぶにしても、それに伴うメリットとデメリットについてはよく理解しておく必要があるでしょう。

メリット

まずは売却のメリットについて見ていくことにします。メリットとして挙げられるのは下記の3点です。

  • すぐに現金化できる
  • 維持費用が必要ない
  • 税金の納付負担が軽減できる

それではこれら内容について解説していきます。

すぐに現金化できる

土地の売却となれば決して安価な売却益ではありません。確かに所有し続けて賃貸料をえるのもいい方法ですが、確実に賃貸収益が得られる保証はどこにもありません。となれば煩わしい思いをせずに一気に高額資金を得た方がいいという人も少なくないでしょう。

高額資金が手にできれば現在抱えている住宅ローンなどの高額借入の一括返済も可能となり、下記のようなメリットを生み出します。

  • 利子負担がなくなる
  • 保証料の返還が受けられる

また、相続人が複数いる場合なら、分割相続しやすくなるというメリットも出てくるでしょう。

維持費用が必要ない

土地を所有するということは先にも言ったように下記のような維持費用が必要となってきます。

  • 税金支払い
  • 管理費用

立地条件がよく借り手が後を絶たない土地ならば維持費用を支払っても、十分な収益が見込めるでしょうが、所有している土地が必ずしもそのような条件を備えているとは限りません。

となればこれら維持費用だけの支払いが必要なマイナス収益が続く不良物件となる可能性も出てきます。

売却すれば一気に現金が手にできるだけでなく、維持し続けて収支の心配をする必要もありません。

税金の納付負担が軽減できる

土地を所有し続ければ毎年下記の税金納付が義務付けられます。

  • 固定資産税
  • 都市計画税

しかも、先に解説したようにこれら税金は更地の場合、高額支払いとなるケースが少なくありません。また売却すれば下記のような税金や費用が発生しますが、相続した土地ならば早めに手放せば税負担が軽減される特例もあります。

  • 譲渡所得税
  • 取得費
  • 譲渡費用

基本的に譲渡所得税は所有期間が短いほどその税率が高くなります。しかし、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、課税対象となる譲渡所得を少なくできるため、支払う税金を軽減でき、2019年末までは譲渡所得3,000万円以内なら譲渡所得税はかかりません。

となれば高額となる税金支払いを大きく軽減できるのは、売却で得られるひとつのメリットと言えるでしょう。

デメリット

メリットについて理解してもらったところで、次は合わせて覚えておいてもらいたいデメリットについて見ていきます。売却で考えられるデメリットは下記のとおりです。

  • 賃貸収益を得る機会を失う
  • すぐに買い手が見つかる保証はない

それではこれら内容について解説していきましょう

賃貸収益を得る機会を失う

ここまで解説してきたように土地を所有し続ければ、土地活用によって継続した収益を得ることができます。これは収益性のある立地条件かどうかが大きく影響してきますが、将来的な土地開発によって収益性のなかった土地がそうなる可能性は否めません。

そう考えれば売却によってその権利を失ってしまうのは大きなデメリットとなってくるでしょう。

特に立地条件のいい収益性の高い土地の場合には、本当に売却してしまっていいのかよく熟考する必要が出てきます。そのような土地は高額な売却益が期待できますが、どちらが自分にとって利のあるものなのかよく検討するようにしてください。

すぐに買い手が見つかる保証はない

所有していても仕方がないから売却して一気に現金化しようと考えても、必ずしも思い通りにいくわけではありません。下記のようなことが影響してすぐに買い手が見つからず、維持費用を支払い続けることも想定されます。

  • 売却額で折り合いがつかない
  • 立地条件が良くない

売りに出せば必ず売却できるわけではありません。売却するためには大幅な値引きが必要になることも出てくることでしょう。需要と供給がイコールにならなければ売却できないのは大きなデメリットと言えるでしょう。

まとめ

土地は活用してこそ資産価値を生み出します。活用せずに放っておけば維持費用だけの支払いが必要となる不良債権とかすだけです。

自分にとって最適な土地活用がなんなのかをよく検討し、所有者はマイナス資産からプラス資産へ変えるための展望が必要となってきます。まずは今回解説した内容をもとに、貸した方がいいのか、売却した方がいいのかを考えるところから始めましょう。

そのまま放置し続けることだけは絶対にNGです。この点をよく理解して収益性の高い土地活用となるようにしてくださいね。

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