土地を生前贈与した場合の節税効果とメリット・デメリット

生前贈与の最大のメリットは財産の一部を生きている内に贈与することで相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できる点です。

平成25年の税制改正により生前贈与にかかる贈与税が大幅に見直しされたことで、支払う税金が減らせるケースが多くなり、近年は節税効果を狙った生前贈与を検討する人が増えています。

しかし、生前贈与は全ての人に節税効果を生むものではありません。生前贈与で発生する贈与税の性質をよく理解しておかなければ、却って多くの税金を支払うことにもなりかねないからです。

そこで今回は生前贈与についてよく理解してもらった上で、そのやり方や注意点について徹底解説していきます。

生前贈与とは?

それではメリットを生む生前贈与とするためにも、そのメリット・デメリットを見ていきながら、生前贈与で節税効果が生まれる人はどのようなタイプなのかを解説します。

生前贈与のメリット

生前贈与のメリットは実行することで相続税の支払い負担を軽減できる点です。贈与税は110万円までが無税ですから、この制度を利用した贈与ならば全くメリットがないわけではありません。しかし、一番のメリットは相続税支払いの負担軽減につきるでしょう。

中には生前贈与の方が相続税よりも税率負担が少なくて済むと思っている人もいるようですがこれは大きな勘違いです。

相続税
金額 税率
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超え 55%
生前贈与
金額 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超え 55%

上記のように税率面では相続税の方にメリットあることは明らかですから、生前贈与で税率軽減のメリットが生まれないことは簡単に理解してもらえるかと思います。それでは生前贈与で節税効果を生むためにはどのような条件が必要になってくるのでしょう。それは相続する財産がいくらなのかが大きく関係してきます。

相続税には無課税の基礎控除が設けられており、この基礎控除額内ならば相続税の支払いは発生しません。よって、まずは相続財産がこの基礎控除額を超えていることが基本条件となってくるでしょう。

基礎控除は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」です。法定相続人が4人の場合ならば5,400万円が基礎控除となるため、相続する財産が5,400万円を超える場合のみ生前贈与によるメリットが生まれるというわけです。

生前贈与をした場合の節税効果

それでは実際に生前贈与をした場合の節税効果がどのように生まれるのかを見ていきましょう。例に挙げる条件は下記のとおりです。

  • 相続額 1億円
  • 相続人数 1人

この場合の相続税の基礎控除額は3,600万円となるので、課税対象額は6,400万円となり、
その30%の1,920万円が相続税として発生します。しかし、100万円の生前贈与を行なっていたとしたらどうでしょう。

課税対象額は6,300万円、相続税は1,890万円となり、贈与税は無課税ですから30万円の節税効果を得ることができます。

また贈与税がかかる310万円の生前贈与を行った場合はどうでしょう。贈与税の課税対象は200万円となり20万円の贈与税が発生します。しかし、相続税の課税対象額は6,090万円で相続税は1,827万円となり、この場合も下記のように節税効果が発生します。

1,920万円-1,827万円-20万円=73万円

相続税の税率が30%ですからそれよりも低い20%の贈与税を支払ったとしても、しっかりと節税効果が生まれるというわけです。

生前贈与のデメリット

それでは生前贈与のメリットについて理解してもらったところで、次はそのデメリットについて見ていきます。生前贈与の主なデメリットは下記のとおりです。

  • 贈与税がかかる
  • 土地や住宅の場合は贈与された側の管理が必要になる
  • 登録免許税が5倍になる

これではこれらデメリットについて詳しく解説します。

贈与税がかかる

相続税は1,000万円以下の税率が10%なのに対し、贈与税は下記のように高い税率が課せられていることからも高い税金であることは明白です。

金額 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%

高額な生前贈与をして相続税を減らそうとしても、贈与額に注意しなければ下記のように高い税金を支払う結果を招くことにもなりかねません。

  • 生前贈与額1,000万円 贈与税300万円
  • 相続額  1,000万円 相続税100万円

よって、生前贈与を行う場合には支払う贈与税がいくらなのかを必ず確認する必要があります。税率が相続税よりも高くなる生前贈与はデメリットしかもたらしません。特に高額な生前贈与を行う場合には下記のようにさらに高い贈与税が発生するので注意が必要です。

金額 税率
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超え 55%

ほかの税金と比較しても一般的に贈与税は高い税金だと言われています。将来的な相続時に節税効果をもたらさない生前贈与だけは避けるようにしましょう。

土地や住宅の場合は贈与された側の管理が必要になる

土地や住宅を贈与された場合には、その贈与された人にはその不動産を管理する義務が発生します。贈与後にその不動産を活用するのであれば管理義務も意味のあるものとなるでしょうが、活用せずにそのまま維持するのであれば土地や住宅を管理しするための費用が発生するだけです。

また不動産維持には管理費だけでなく下記のような税金支払いが毎年発生するので、活用するあてのない不動産の贈与を受ければ、維持管理費だけが発生する単なる負担でしかありません。

  • 固定資産税
  • 都市計画税

登録免許税が5倍になる

また土地や住宅などの不動産を贈与された場合には、不動産の名義変更が必要になってきますが、その名義変更時にかかる登録免許税にも注意が必要です。

登録免許税は相続と生前贈与では下記のように5倍もの差が出ています。

  • 生前贈与 固定資産評価額の2%
  • 没後相続 固定資産評価額の0.4%

固定資産評価額が1,000万円の場合、没後相続ならば4万円ですむものが、生前贈与では20万円もの税金支払いとなってしまいます。活用するあてのある不動産であればこの支払いもやむなしでしょうが、活用のあてがない場合は先ほど話した維持費用がかかる上、高い税金支払いとなるので生前贈与は避けた方が無難でしょう。

生前贈与のやり方

生前贈与は財産をあげる側の贈与者ともらう側の受贈者か共同で手続きを行う必要がありますが、この2者の関係性によって利用できる制度や特例が異なってきます。よって、生前贈与を行う際にはどのような制度や特例があるのかを理解しておく必要があるでしょう。

それでは生前贈与にはどのような制度や特例があるのかを見ていくことにしましょう。

一般贈与

先にも贈与税率について触れましたが2015年以降は下記のどちらに分類されるのかによって、課税される税率が異なっています。

  • 特例贈与
  • 一般贈与

特例贈与と一般贈与の違い

特例贈与の税率は下記のとおりで、一般贈与よりも低い税率が適用されます。

金額 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超え 55%

特例贈与として認められる条件は下記のとおりで、基本的には両親や祖父母からの財産贈与がその対象となります。

  • 贈与者 受贈者が父母や祖父母、曾祖父母などの直系尊属
  • 受贈者 贈与された年の1月1日に20歳以上

直系尊属からの贈与はそれ以外の贈与税よりも優遇されているというわけです。そしてこの特例贈与の条件を満たさない場合の贈与を一般贈与と呼び、下記のように特例贈与よりも高い税率が適用されています。

金額 税率
200万円以下 10%
300万円以下 15%
400万円以下 20%
600万円以下 30%
1,000万円以下 40%
1,500万円以下 45%
3,000万円以下 50%
3,000万円超え 55%

あまり知られていませんが受ける贈与がどちらの贈与に当たるのかで適用される税率が異なってきます。直系尊属以外の贈与の場合には一般的に知られている税率が適用されないので、注意するようにしましょう。

相続税精算課税制度

相続税精算課税制度とは生前贈与で発生する贈与税を、贈与額2,500万円を上限として非課税にできる制度です。基本的には2,500万円の生前贈与を受ければ特例贈与でも1,125万円もの贈与税が発生しますが、この制度を利用すればこの高額となる贈与税の支払いを回避できます。

しかし、注意しなければならにのは、この制度で完全に税金の支払いが免除できたわけではないという点です。贈与者が死亡した際に生前贈与として受け取った金額に応じた相続税の支払いが発生するからです。

1億円の財産を持つ人から2,500万円の生前贈与を受ければ、亡くなった時の課税対象額は残りの7,500万円としたいところですが、相続人は生前贈与を受けた2,500万円を含めた1億円に対する相続税を支払うことになります。

高額となる贈与税の支払いを回避することはできますが、税金支払いが免除されたわけではないことをしっかりと覚えておきましょう。

マイホーム贈与で配偶者控除

配偶者間でマイホームを贈与する場合には、贈与税の配偶者控除が受けられます。この配偶者控除は居住用住宅や居住用住宅の取得にかかる金銭贈与に適用できる制度で、最高2,000万円の控除が受けられます。

基礎控除額の110万円と合わせると、最高で2,110万円の税金控除が受けられるというわけです。

しかし、この配偶者控除は下記のように受けるための条件がかなり厳しく設定されているので、配偶者であれば誰でも利用できるというわけではありません。

  • 婚姻期間が20年以上であること
  • マイホーム用の住居またはそれを購入する資金であること
  • 贈与を受けた翌年の3月15日までに入居し、その後も継続して居住する見込みがあること
  • 過去にこの配偶者控除を受けていないこと

利用検討時には上記条件が全てクリアできているかどうかをしっかりと確認してください。

教育資金の一括贈与

30歳未満の子供または孫に対しては1,500万円までの教育資金贈与は非課税で贈与が受けられます。教育資金には下記のように多岐に渡るものが認められているので、非常にメリットのある制度と言えるでしょう。

  • 授業料
  • 入学金
  • 塾の受講料
  • スイミングスクールの受講料
  • 自動車学校の入学金や受講料
  • 留学費用(ホームステイ代は除く)

しかしこの制度は下記のような少々厄介な点も見られるので、利用時には注意が必要になってきます。

  • 教育資金として利用した領収書を銀行に提出しなければならない
  • 30歳までに使い切らなければならない

利用時には専用口座を開設して、その銀行に利用した全ての領収書提出が義務付けられます。また、30歳までに全てを使い切らなければ、残った贈与額に対して贈与税が発生します。計画的な利用が必要になってくるので、この制度を利用する際には注意が必要になってくるでしょう。

生前贈与の注意点

生前贈与は制度や特例を利用すれば大きなメリットを生み出すことができますが、生前贈与として認めてもらうためにはいくつかの注意点が存在します。この注意点を理解しておかなければ、生前贈与として認められないという羽目にもなりかねないので注意が必要です。

そこで最後に生前贈与で注意しておいてもらいたいポイントを解説していくことにします。

贈与税は受け取った側が支払う

生前贈与を受けると受贈者には贈与税の支払い義務が課せられます。しかし、特別贈与でも一般贈与でも年間で最大110万円までは基礎控除が受けられるので、この制度をうまく利用すれば節税効果を生み出す贈与とすることができます。

ですが先にも話したとおり贈与税は相続税よりも高い税率が設定されているので、基礎控除だけでなく用意されている制度や特例をうまく利用できなければ、高額な贈与税を支払う羽目にもなりかねません。

贈与額に対する贈与税が幾らになるのか、この点だけはしっかりと把握しておくようにしましょう。

名義預金は贈与ではない

名義は子供のものであってもその口座の通帳やキャッシュカード、銀行印を子供に渡さず親が管理していた場合、その預金は名義預金とみなされて相続税の課税対象となるケースも少なくありません。

名義が子供でも実際は親が管理していることから、その口座預金は親の所有物と判断されるからです。よって、親が子供の将来のために子供名義で口座を作り、そこに預金をしている場合には名義預金となり贈与対象にはなりません。

しかし、下記の方法を取ることで名義預金とることを回避することができます。

  • 子供と親の間で贈与契約書を作成する
  • 通帳やキャッシュカード、銀行印の全てを子供が管理する

子供のために預金をしている人は名義預金と判断されないように、事前準備を怠らないように注意しましょう。

計画した定期贈与では贈与税がかかる

毎年110万円までの贈与は基礎控除されるので、課税の対象外となります。しかし、毎年、基礎控除額いっぱいの贈与を繰り返していると、贈与税支払いの税金逃れと判断されて贈与税の支払いが求められることにもなりかねません。

そうならないためにも、贈与時には下記のような対応が必要となってきます。

  • 毎年、贈与する時期をずらす
  • 毎年の贈与額を変える
  • 時には110万円を超える贈与をして贈与税を納める

計画的な定期贈与と判断されて高額な贈与税を支払うことにならないよう、くれぐれも注意してください。

急な贈与は相続税の対象に

被相続人がなくなりそうだから、節税対策のために生前贈与をと考える人は少なくないでしょう。しかし、こういった駆け込み贈与は相続税の課税対象と判断されることになるので注意が必要です。

駆け込み贈与と判断されれば贈与された財産は持ち戻しされ、相続税の課税対象額に加算されます。下記の2つのケースに当てはまる場合は完全に駆け込み贈与と判断されるため、確実に贈与自体が無効となってしまいます。

  • 被相続人が亡くなる3年前の贈与
  • 贈与対象が相続人または受遺者である

駆け込み贈与と判断されないためにも、節税効果を狙った生前贈与は余裕を持って行うようにしましょう。

まとめ

生前贈与はうまく利用してやれば大きな節税効果を生み出します。よって、相続する被相続人がいる場合はどれくらいの節税効果が生まれるのかを確認してみる必要があるでしょう。

受けられる節税効果は受贈者の置かれているケースによって違ってきます。特例贈与だけしか利用できないこともあるでしょうし、今回紹介した制度や特例が利用できればさらに大きな節税効果を生み出すこともできます。

まずは自分が利用できる制度や特例はないのかを確認し、できるだけ説明効果が大きくなる贈与を模索する必要があるでしょう。今回解説した内容を参考にして、できるだけ大きな節税効果のある生前贈与を目指しましょう。

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